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眠ってた写真を久しぶりに見ると料理の味から街の空気まで鮮やかによみがえってくる。

数年前の冬の記憶。友人が1965年のラターシュが手に入ったと言うので六本木の『ブルギニヨン』というフレンチレストランに行った。客のいるテーブルから小窓を通して厨房が見える小さなレストラン。シェフがブルゴーニュのワインが好きで、出てくる料理もそれを意識して調理される。豚の血や鴨を使った料理が抜群にうまい。「幸運にも」2008年の東京ミシュランには載らなかった。

古いワインなのでボトルの中の澱(おり)を落とすために何日も前にお店に持ち込み、ボトルを立てた状態で預かってもらった。DRCの年代モノ。お金の事は言いたくないけれど、いったいいくら持っていけばいいのだろうと思った。

anago

ワインの事を書いている文章を読むとほとんどの場合は虚しい感じがしてしまう。ワインを熱っぽく語る人が周りにいたりするとこっちが恥ずかしくなる感じもする。鉄道ファンの人が鉄道のすばらしさを語っても微笑ましい感じがするのにワインに限って何でそんなに屈折した気持ちになるのは何故だろうといつも思う。

ワインの話には「これくらいは知らない人でも知っているだろう」という暗黙の前提というか威圧感があって、これはボルドーだからカベルネとメルロがどうのこうの、何年ものだからまだ早いとかなんとか...要するにワインについて言葉にすると「これぐらいは知ってますよねぇ」的な世界が広がってしまうからだと思う。知らない人はカヤの外、少し知っている人はよく知る人の前で知らないふりをする。だから今まで僕はブログの中でワインについてはふれなかった。書けば野暮な感じがするし、自分の底の浅さをひけらかしているようなので。

今回、昔の写真をひっぱり出してブログに書こうと決めたはいいが、やっぱり難しい。ワインはグラスに注いでみると、ただの赤い液体。それを文章で表現しようとするとどうしてもその特別性をあらわす言葉を使わなければいけない。やっぱりカッコつけてる感じがして嫌だ。恥ずかしいけれど写真の下に注釈をつけることにした(あ~はずかしい)。

ラターシュ
コルク
グラスのラターシュ
1965年のラ・ターシュ。DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ)が作るワインのひとつ。ブルゴーニュワイン。

つい先日同僚が「ワインはわからないですねぇ。高級なものだと言われて飲んでも千円ぐらいのものと違いがわからないですよ。」と言った。そんなことはない、誰だってそれぐらいの違いは分かると思う、少なくともグラスを二つ並べて飲み比べてみれば。そして恐らく彼がそんな事を言うのは本当においしいワインを飲んだ経験が無いだけなのだと思う。

世の中に美味しいワインは無数に存在しても、美味しくないワインは少ない。僕は「このワインは美味しくない」と言う自称ワイン愛好家は信用しない事にしている。本当のワイン好きなら不出来な(または保存状態の良くなかった)ワインに出会ったら「惜しいなぁ」という反応をするはずだ、映画好きが駄作の中にも良いところを見つけようとするように。

年代物のラターシュを開けるので緊張していたからか、料理の写真をいくつか撮り忘れた。その日シェフと相談して決めたのはアナゴ、生ガキにジュレがのったもの、鴨を焼いたもの(たしか血を使ったソース)、デザートには瓶の中に入ったクリームブリュレ...だったと思う。シェフいわく銃で撃った鴨を出した事もあったけど血のまわりが良くないので最近は飼育した鴨を調理しているとの事。もうすぐジビエの季節だけれど狩猟した獣肉が美味いとは限らない。

鴨

シャトームートンまで65年を用意してくれた友人。いつも僕が料理する時には3,4本見繕って自宅のセラーから出してきてくれる。彼はかなりのワイン好きだ、それもブルゴーニュの。知識やウンチクはどうでもよい。目の前にとびきりのワインがあると飲みたくてしょうがない。死ぬまでにあと何本DRCを飲む事が出来るかを考えると買わずにはいられない、飲まずにはいられない。そんな友人。

ワインとの一期一会と言うと聞こえがいいけれど、同じ銘柄で同じヴィンテージでも当たり外れがあるから高いワインにはリスクがある。だけど上の方で述べたように、運悪く外れてしまったワインでも高価なものならけっこうかなり美味しい。そしてワイン好きがいつも期待してしまうのは「当たり」だと思う。安くて当たりではない。高くて当たり。

当たりに出くわすと一口注ぎ込んだ後に一瞬「あれっ何だろうこれ?」となる。

幼い頃の情景。森で道に迷った末に小川を見つける。周りを見渡すと30メートルぐらい上流に誰かがいる。向こうはこちらに気づいていない。よく見ると冷たい川の水で濡らしたハンカチを頬にあて休息をとっている美少女がいる。

当たりのワインを口にするとそんな感じになる。人によってはもっとセクシーな情景かもしれない。
いずれにせよ、いいワインの当たりに遭遇するとそういう感覚が味わえる。

シャトームートン
シャトー・ムートン・ロッチルド1965年。ボルドーのポイヤック村。

なんだか取り留めのない文章になってしまった。ゴメンナサイ。


今度、このワイン好きの友人の別宅に行ったらDRCを開けてくれるという。

また美味しそうなワインに出会える。

当りかどうかはコルクを抜いてみないとわからないけれど...

プディング

プディング2


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コメント
この記事へのコメント
>おきくとさくらさんへCuisineより
ご無沙汰しております。コメントありがとうございます。

ウンチクは僕も嫌いだなぁ。でも、本当に素人で「干草の香りが…」なんて言う人いるんですか。ソムリエでも日常的には言わないですよね、そんな事。

そのランチのテーブルワイン。きっと酸化が始まっていたんだと思います、それも箱ごと。保存場所が悪いとそこにあるボトル全部悪くなっちゃうんですよ。夏のエアコンの効いていない倉庫に入れておいた高いワインが全部ビネガーになってたというもったいない話を聞いたことがあります。とほほ。

東京に来てらっしゃるんですね。いつかお会いしてパワーをいただきたいです。
2008/11/08(土) 03:29:45 | URL | >おきくとさくらさんへ #-[ 編集]
ご無沙汰してます。
久しぶりにネット徘徊してますとワインの話なので、遅ればせながらコメントを・・・

ワタシも一度だけワインの試飲会?見たいなのに誘われていったことがありますが、みなさん
「干草の香りが・・・」
「ピーマンのような残り香が・・」「ガーネットの輝きが・・・」
とかおっしゃるのを聞きながら
(・・・いや、ワタシこういうのダメかも)と思いました。薀蓄は苦手です。。

ワインは大好きですが、ワタシはただの飲み手なので
信頼できる店で美味しいワインが飲めればそれでよく
銘柄も産地もあえて覚えない主義です。

それと赤ワインに関してはすごく不味いものって確かにあまり無いと思います。

でも一度だけフランス料理の店で怒り出すくらい不味いテーブルワインを出されたことがあって、
「店長呼べ!」と言いました(笑)

ランチだったけど、値段の高い安い関係なく許せないくらい不味かったんですよ(笑)

でも、変えてもらったワインも負けず劣らず不味かったので、そこの店は店長の舌が相当壊れているのか、あるいはワタシの舌のレベルが低いのか、後にも先にもあれが不味いワイン経験一回きりです。

あ!長くなってしまいました。

ワタシも最近は週の半分は東京ですからいつか機会があれば・・・





2008/11/03(月) 16:16:42 | URL | おきくとさくら #3fIBvpkA[ 編集]
>ゆうこさんへCuisineより
そうですねぇ。
あのお店は他の店と違って堅苦しい感じがしないですらいいよね。
そう!今度は一緒にワインをすすりましょう。脳髄にズギューンってくるような料理と一緒にね。  
2008/10/26(日) 22:46:31 | URL | >ゆうこさんへ #-[ 編集]
あの夜ですね・・・
そういえば、近くのテーブルでそんなステキなことをしている一団が
いたような・・・。
フレンチのお店で、テーブル横にしゃがんで味見させてもらったの
なんてあの時が最初で最後です。
今度はご一緒したいものです~。
2008/10/01(水) 00:47:12 | URL | ゆうこ #-[ 編集]
>よねさんへCuisineより
「よね」さんなんですね。いいHNじゃないですか。こちらこそよろしく。

赤ワインはまったりできるんですよね。とろ~んていう感じです。一度栓を開けると1本全部飲まないと酸化してしまうので、うちでは空気をポンプで吸い出して真空にする栓があります。お互いほどほどにゆっくり楽しみましょうv-272
2008/09/20(土) 00:43:31 | URL | >よねさんへ #-[ 編集]
お久しぶりです。いろいろありましてHNを変えました。
元・さおりで、今は「よね」という名前にしました。
イメージがたがたに狂ってすみませんが、今後ともよろしくお願いします。

ワイン、大好きです。お酒の中で、一番好きです。
赤の渋くて重いのも、初心者ですがぜんぜん平気で飲めます。
でもアルコール度数が高いんですよね、ワイン。
去年、口当たりの良い白のデザートワインをがんがん飲んだら、真っ青になって震えが来たので(これ急性アル中ですよね)、それ以来ペース配分には気をつけています。
そう高価なワインを飲んだこともないので、料理との相性がどうとも言わずに、何でもそこそこ美味しくいただきます。
2008/09/15(月) 16:05:19 | URL | よね #qZNchAr.[ 編集]
>cookieさんへCuisineより
はい、また行きたいですね。アラカルトだと食べたいものを選べるからいいねぇ。ワインも楽しみです。
2008/09/13(土) 00:10:17 | URL | >cookieさんへ #-[ 編集]
シンガポールから一時帰国した時の、冬のこの夜のコト
今でも鮮明に覚えています♪ 皆で楽しかったですね☆
ブルギニオン、また連れて行ってね♪
2008/09/12(金) 19:00:29 | URL | cookie #nDl.hC4.[ 編集]
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